母殺し
晴れ着きて舞いくる蝶の母殺し
女身のごと柱細りて十三夜
屋根裏に秋の山賊いて青線
くくられし狂女ありけり夏柱
女郎血を吐きし盥のお月さま
軽石の秋の骸を拾いけり
井戸に貌落してきたり冬の僧
繭の穴破りそこねてこの世かな
縄跳びの縄の牢獄青山河
標本の蝶恍惚と梅雨長し
母が捨てし石より旱はじまりぬ
蠍座を飼いてこの世の女なり
胎内で家事を見ている鋭さよ
木枯らしの吹き残したるちゃんちゃんこ
断崖に柱燃えたつ彼岸かな
びんびんと穢れの月の霜柱
われにあるもしやの母性怖れけり
ふり向けば雪のかなたの子守歌
花吹雪箱庭に故郷閉じ込めて