春の鬼 青うさぎ

青うさぎ

螢烏賊海のあの世とおもいけり

箸使う背中小さし雲の峰

古代よりトンボ舞いくる半夏生

兄弟が見しまぼろしの旱干

涅槃図にアブ来て涅槃ゆがみけり

ひょくひょくと露草の野の青うさぎ

耳助がひそむいずこも白茫

月の森に耳生えあたり耳だらけ

満月の海を抜け出す月見草

ほおばってもの食えば見ゆ涅槃西風にし

馬眠るひづめに星を掻きわけて

苦しくて来世も女花海棠

かつてノアより見た夕陽雁渡る

耳ひとつ置いてきし世に鳥渡る

返り花だいてくださる神もいて

手のひらをこぼれしもののように雪

炎えるかもしれぬ椿を見ていたり