母体幻想 桃の花

桃の花

深海の魚は真っ赤な夢をみる

白髪になるまで啼いて春の鳥

さきの世であやめし人と野の遊び

ほとすこし汗ばむほどの草いきれ

橋渉りかえらぬものに人の声

夏日傘獣に愛されしことも

母の暮わめっく喰いつくぶら下がる

サーカスの屋根まで降りてくる銀河

百杖の自画像に他人秋の暮

木犀散る夢死なしめし父を知らず

水の世のほとりにはるかれんげ草

紙風船夢のきわにて風を待つ

天井にはねをわすれて桃の花