女郎花
母胎より刺客は来たる夕山河
朽ちゆくものの音して秋の雨
米櫃の米ぬくきかな青線忌
生まれつき親のいない子や雁渡る
夫婦間近親相姦寒苦鳥
先の世で梳いて落ちたる木の葉髪
捨てた子のたましいいくつ白牡丹
子の匂いして寄りくるよ夕螢
針を打つ恍惚蝶に知られけり
髪赤くあかく紅葉して奈落
女郎花なまりのごとき湯の重さ
ある繭を砕けばこの世はなくなるぞ
たましいの焦げしところにカンナ咲く
ある花は捨て身で咲けり寒牡丹
手紙という母の牢獄落葉焚き
夢にてもひとりぼっちの青線忌
姓は某生まれは信州鬼胡桃
大漁の網をのがれし古鯰