花屋

菊枕虚子と久女の句が並ぶ

イエスとて一人のおとこ向日葵剪る

赤とんぼ他人に生れし親兄弟

銀漢の波もうねるや裏日本

一本のぬけみち昼蝙蝠飛べり

けら鳴くや愛はなけれと性がある

発露なき千の鶏頭立ち尽くす

稲光この世に気管殖えるばかり

しのび寄りやすき背後に稲光

白露や死にざまなどは考えぬ

わが蒔きし嵐の種も芽吹くころ

花屋に薔薇がなければ草を摘んでこい

うしろからつるりといれて揚雲雀

蟻地獄この世の男を待ちはせぬ

抱いてみたところで花は野にかえる

大旱や母と呼ばれて恥忘る

おそらくは死より宦官さるすべり