春の鬼 屋根裏

屋根裏

鬼跳ねてみわたすかぎり菜花の黄

母の顔ぶらさげて来る春の鳥

さかる都市の屋根裏きしむまで

闇市に子を構うや春の鬼

紙魚しみ消ゆる布団の裏の海原へ

片肺に海原蒼き転校生

炎帝の舟と海とが愛しあう

才うすき男えらびて自慰をする

少年の静脈透けり春の川

死にしもののあまた蒼みて繭匂う

まぼろしの老婆が囲む狐火や

空蝉に銀河の川音とどきけり

春雨やふぐりあたたかしとおもう

椿いま畜生道へ落ちにけり

寒椿追いつめられて少女となる

落ちざまに地獄を見たり寒椿