鳥
鶏頭の一途に咲いてつかれけり
張りひろげ花かきあつめ女郎蜘蛛
月の夜の鶴はたぶらかされに来る
かげろうをたらふく食べて沼しずか
花野来るいとしきものを刺すように
鳥葬の山に真っ赤な羽根残る
鬼瓦たとえば秋の生殖器
てのひらの六道を雁渡りゆく
襞という襞に紅さす白牡丹
螻蛄鳴くや臨月の月昇りくる
涸れてゆく沼の悲鳴を聴いている
さみしくて身内に百舌鳥の声漏らす
いづれにも彼岸はなくて罌粟燃ゆる
鳥に生まれて愛をさえずるつぎの世も
葭切に沼の魂迫りくる
猛禽と一枚の闇分かち合う
蝉の翅運ばれてゆく枯野かな
抱かれおれば野分は遥かより来たる
今打ちし秋の蚊ほとけかもしれず