百日紅
愛される空洞ひとつ百日紅
呑みくだすとき淋しかり蛇も人も
椿一輪咲かせるための母殺し
もつれあい生きて丸太が爪伸ばす
鵙の来てはらめはらめとそそのかす
もの食うに使わぬ口や羊歯匂う
産むためにあらねば灼ける犬となる
火だるまの椿奈落へまっしぐら
泉まで来て空蝉の翅使う
書かれざる一行照らす螢かな
リビドーは悲し向日葵剪り落とす
抱かれて砕けてしまう寒椿
渡らねばならぬ川あり夏嵐
首吊りの輪の夏空も予定にある
包丁研ぐ脳裏に夏野ありしまま
白骨とありても化粧う百日紅
崖っぷち来て螢火を背負いけり
風の墓ひとはこの世に流されて