長い雨
鶏頭の嘘と信じて契りあう
盗まれてみたく瓜に化けるかな
仰向けに倒れるものに向日葵など
死にきれぬ蝶いて花野には遠し
毬ときに母をおもえば転がれり
鶏頭の内猛烈に枯れてゆく
過去に渡りし記憶のありし無縁橋
葉鶏頭 花はあの世に置いてきた
枯れ沼が夢の縁まで来ていたり
逸平というけものみちきらきらす
もう何も書けない嵐内より来る
だれも救ってくれない百舌鳥の声通し
ぎりぎりの蝶の羽音がまとわりつく
肋骨のわが一本は人形の骨
百舌鳥の贄愛するものをまず殺す
悦楽のはての肉塊鉄匂う
花野来てみればいずれもけものみち
万太郎忌ばかな男に惚れたかな
わたしにも逸平がいて長い雨
摘み来たりて花に抱かれる秋桜